須田英明.わが国における歯内療法の現状と課題.日歯内療誌2011;32(1):1-10
こちらの図から分かるように、日本における歯内療法の「成功率(=数年後も再発せず歯を健康に使えている)」はわずか30〜50%となっており、成功率70〜90%の米国とかなりの差ができています。日本の根管治療の水準はとても高いとは言えません。
非常にショッキングで厳しい状況です。
現在の健康保険制度では、根管治療に対する評価報酬が低いために使用できる器具が限られ、本来かけるべき治療時間もかけられません。
その結果として、成功率も低くなってしまうのです。
おそらく保険制度が大きくかわっていないので、日本における歯内療法の成功率が30〜50%という数値は2021年現在でもあまり変わっていないでしょう。痛みがないので治っていると思っていてもレントゲン上では根の先に化膿が診られるケースが多いのです。
このように日本の歯内療法は痛みを消すだけの応急処置レベルに留まっているとも言えるでしょう。
世界に冠たる国民皆保険制度。この制度が制定されたのが昭和の中頃。この頃は虫歯の洪水と言われた時代でした。今では信じられないことですが、朝から歯科医院には行列ができ治療は「5分治療」とも言われました。もちろん多くは麻酔をする時間さえありません。この頃の歯科医は朝から晩まで虫歯と戦い、平均寿命も短かったと聞いております。
この状況を打破すべく国は大学歯学部をたくさん増設していきました。国策どおり、虫歯はその後減少の一途をたどりましたが、歯科医師は増える一方。さらに保険制度の根本的なことは令和になっても変わっていません。
減少する患者を増える歯科医達はこぞって奪い合いを始めたのです。「削ってナンボ」の請求、保険点数は低く抑えられ、予後のチェックもありません。歯科医は合理的に短時間で治療を終える方法を身に着けました。治療台を並列に並べ、一人の歯科医が同時に何人も患者を診る方法です。海外の歯科医からするとそれは「クレイジー」です。それは感染の問題、治療精度の維持、患者さまとのコミュニケーションなどが不十分になりがちです。どれもが歯科医療にとって不可欠であり繊細な器官である口腔という臓器をリスペクトしているようには見えないからです。
しかし海外の歯科技術を学ぶ日本人も以前より増えてきました。
そのような歯科医は制約の多すぎる保険治療を離れ始めています。
歯科医院は現在経営的な手腕がなくては生き延びることが難しくなっています。美しい内装、広告宣伝費の高騰など小さな歯科医院には厳しい環境となっています。
大手ハンバーガーチェーン店のように広い駐車場、きめられたメニュー、生産合理性を追求した医院が増えています。
一方では東京や大阪を中心に欧米のように自由診療・専門化する歯科医院も出始めています。
本当に必要な治療を高い質で提供するために、名古屋市千種区の歯医者 覚王山プライベートデンタルは自費治療(自由診療)専門の歯科医院として開院しました。