「私って根尖病巣ができやすい体質でしょうか?」
レントゲン写真を見て、複数本の歯に根尖病巣(根の先の病巣)が見つかった患者さんから、このような質問をいただくことがあります。
もちろん、体質的な要素もゼロではありませんが、多くの場合、適切な治療を行うことで改善が見込めます。
今回は、同じ患者さんのお口の中に複数本の歯に根尖病巣が見つかった症例を2つご紹介し、その治療過程を詳しく解説していきます。
症例1:右下奥歯の根尖病巣
右下奥歯に噛んだ時の違和感があるとのことで来院された患者さんです。レントゲン撮影を行ったところ、大きな根尖病巣が見つかりました。
まずは、被せ物などの人工物を除去し、**歯内療法(根の治療)**を開始しました。
根管(歯の根の中の神経や血管が通る管)はレントゲンには写らないほど細く、根尖病巣を治すためには、この細い根管の中に器具を通してしっかりと治療する必要があります。
この患者さんの場合、根管が途中で大きくカーブしており、治療が難しいケースでした。
90分間の治療を2回行い、MTA(歯科用セメント)で根管を充填した後、3ヶ月間仮歯で経過観察しました。
3ヶ月後、レントゲン写真で根尖病巣の改善が確認できました。その後、**クラウン(被せ物)**を被せる治療へと移行しました。
症例2:左下5番目の歯の根尖病巣
続いて、同じ患者さんの左下5番目の歯の症例です。セラミックの被せ物が入っていましたが、大きな根尖病巣が見つかりました。
すぐに抜歯をするのではなく、歯の保存を試みました。
もちろん、歯を残せる保証はありませんでしたが、綿密な審査・診断を行った上で治療を開始しました。
根管は1つから2つに枝分かれしており、根管の形態は人によって様々です。思わぬところに根管が見つかることもあります。
根の先まで根充剤(MTA)を入れ、きちんと噛めるように仮歯をセットして3ヶ月間経過観察しました。
レントゲン写真で改善傾向が見られたため、クラウンを入れる準備に取り掛かりました。
根の治療後の経過観察の重要性
根の治療には時間がかかりますが、治療後数ヶ月後にレントゲン写真を撮影し、経過が良好であることを確認することが非常に大切です。
もし治っていない状態でクラウンを入れてしまうと、せっかく入れたクラウンを外して治療をやり直すことになってしまいます。
何度もクラウンを入れ直している場合は、根尖病巣が治っていない可能性も考えられます。
保険治療と自由診療における根の治療
保険治療では、痛みが消え、根の治療が終了したらすぐにクラウンを被せるのが一般的です。これは、
- 根管治療を終えた歯は強度が弱いため、すぐにクラウンを入れた方が良い
- 長期的な経過観察は再感染のリスクを高める
という理由からです。
しかし上記の心配事は適切な仮歯を入れれば解決することであり、歯を保存するためには、根の治療後数ヶ月間の経過観察が非常に大切です。
自由診療や自費の歯内療法であれば、治療の結果にこだわって、より丁寧な治療を提供できるでしょう。
また、外科的な歯内療法を得意としている先生であれば、早期にクラウンを被せて、もし改善が見られなければ外科的に病巣を取り除くという方法もあります(歯根端切除術)。
(ただし切開して排膿させる応急処置は歯根端切除術とは異なります。)
いずれの場合も、歯内療法後数ヶ月後にレントゲン写真を撮影して、きちんと経過を追っていることが共通して言えるでしょう。
まとめ
今回は、複数本の歯に根尖病巣が見つかった患者さんの症例をご紹介しました。
根尖病巣の原因は様々ですが、適切な治療を行うことで改善が見込めることがご理解いただけたと思います。
歯の保存のためには、根の治療後の経過観察が非常に重要です。
保険治療では制限が多いため難しいとは思いますが、レントゲン写真による経過観察は欠かせないと考えています。
もし根の治療について不安なことや疑問点があれば、お気軽にご相談ください。
「歯をぬきたくない・神経を残したい」「インプラントはどうか?」「はぎしりがひどい」など様々な相談をうけています。
けっして当院の治療を無理にすすめることはありません。
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